物質工学科の近況

物質工学科長 押川 達夫

 同窓会会員の皆様、日頃は本校物質工学科の教育・研究に多大なご支援を賜っておりますこと、御礼申し上げます。2008年12月現在の物質工学科の近況報告を記したく思います。本年4月に初々しい新入生42名が入学してきました。また、新専攻科生として5名の入学生を迎えました。特に、本科1年生においては御殿場研修で「中学生生活とは大きく異なる環境に慣れる」ことを中心にメッセージを伝えてきました。彼らが大きく育ち、本科を卒業することを切に願っております。
 物質工学科の教員組織に大きく変動がありましたのでご報告します。平成19年3月末に瀬尾教授(名誉教授・有機化学)が退官され、引き続き平成20年3月末には浜渦教授(名誉教授・物理化学)が退官されました。永く本校物質工学科の教育・研究に従事されたお二人の先生の大きな穴を埋めるために、平成20年4月に稲津准教授(東工大・物理化学)、大川准教授(無機化学・愛媛大)のお二人が着任いたしました。また、平成20年3月末に教養科化学・浦崎教授(名誉教授)の退官に伴い、本校物質工学科出身教員である小林美学准教授(無機化学)が後任として学内異動されました。さらに、平成21年3月に望月教授が退官されます。教員の変動および教員1名の定員削減に対応するため、および有機化学関連科目の充実を図るために平成21年4月に山根教員(東京医科歯科大・高分子)が着任されます。
 一方、近年の科学技術の専門分野領域が明確ではなく、むしろ広い知識を持った技術者が求められています。従来、工業化学科が物質工学科に改組改編した際に、学生は4年次に「材料化学コース」と「生物化学コース」を選択し、各コースの専門科目を履修してきました。しかしながら、前述のように広い知識を持った技術者育成のために、コース別教育には限界があると判断し、平成21年4月から平成20年度在籍3年・2年・1年生を対象に講義科目を並列開講から直列開講へと移行します。即ち、例えば5年生の科目である「有機材料化学(材料コース必修)」と「酵素工学(生物コース必修)」が同時開講であったものを別時間帯で開講することにより、互いの講義を学生は受講できる配慮を実施します。以上のように教員組織の変動と講義開講の変動に伴い、学生の教育の質を低下させることなく教員一同切磋琢磨しているところです。また、今年度より低学年教育の創造性を重要視し、1年生の「物質工学入門」においてはChemistryに固執することなく、答えのない課題に対して自ら工夫・解決して自己完結する授業を実施しております。
 平成20年度の学生進路について、ご報告します。5年生の就職希望者は22名、進学希望者は25名でした。高専OB皆様の力量が高く評価されている影響もあり、全員内定を勝ち取りました。また同様に進学希望者においても東工大をはじめ様々な大学の第一希望大学に合格することができました。しかしながら、昨今の世界的不況の象徴である「トヨタショック」をはじめ、私達の取り巻く環境が大変厳しい状況になってきました。次年度の5年生に対する就職も厳しくなるのではと危惧していることころです。先が読めない実経済の中、高専卒業で就職するかあるいは進学して答えを先延ばしにするか、充分に本人と保護者と相談しながら進路決定を行っていきたく思っております。今後とも、同窓会会員の皆様のご支援を頂戴しながら、物質工学科のさらなる発展を教員一同築いていく所存です。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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